第1章 (1)渡米

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「なんで!?」 「どうしても」 「何のためにこの国にいるわけ?」 「語学の勉強です」 「じゃなくて、俺のためだろ?」 ……いけしゃあしゃあと、よくそんなセリフ言えるよね…… ってまあ、ほぼ間違ってないんだけど、さ。 アキラはちょっと怒ったような、でも甘い笑みを残したような表情で私を見ている。 少し伸びた黒髪に、こげ茶色の瞳で目尻だけがかすかに二重。 すっかり大人の男っぽくなった頬と、対照的にやわらかそうな唇。 コットンの服を適当に着ました的な力の抜けたファッション。 足元の赤いシューズだけがやけに派手だ。 ここはアメリカ、カリフォルニア州の最大都市、ロサンゼルス。 目の前の彼氏と暮らすためにこの国へ来ました。 水野莉子、18歳。 矢上明良、17歳。 日本から遠く離れたこの場所で、たったふたりきり。
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