第1話

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「ねぇ、今から夜桜どう?」 と電話が来たのが30分前の午前0時キッカリ。 よく意味の分からないメールが来るが、深夜だし電話は初めてだったので、どうしたんだと問う。 すると、 「気分。」 と即答。 明日お仕事休みだし、まあ付き合ってよと言われ、断る理由も無いしそれでも少し心配なので僕は集合場 所の近所の河川敷へと足を運んだ。 「待った?お酒買ってきたよ~」 スウェット姿で現れた僕の幼馴染、よかった、元気そうだ。 「どうしたんだよ。ていうか久しぶりじゃん。帰省してたの?」 「うん。先週ね。あんたのLINEのひとことに'帰省中'って書いてあったから、呼んじゃった。ごめんね。」 「いやいいけど、なんかあったの?」 何もなさそうだけど...。 「ううん、別に何もない。ただ...何か話聞いて欲しくてさ。」 「悩み?とか?」 「はは、いやそんな悩んでないよ!もっとね、くだらないよ。あは、あのねぇ...」 どうやら、昨晩(つまり3時間前くらい)に見た映画に感化されたらしい。 戦時中に紙もペンも無かった作家が、自分の頭の中で物語を描き戦争が終わったら執筆しようとしていた が、結局志半ばで戦死してしまったという内容だ。 「いやー、自分で言うのも恥ずかしいんだけどね、結構いろいろ考えてるのよ。皆そうだと思うけどね。 でもこのままいくとあたし永遠の独身だしさ、ほら、普通はその考えてるいろいろを子供に伝えるじゃん か。」 「なるほど。」 なんだかよく分からないけど一応返事する。 「まあとにかく聞いててよ、そんで聞き終わったら忘れてね。」 「勝手だなぁ。」 「はは、お酒は奢るからさ~、ね?」 たまにはこんな夜も悪くないかな。 そう思って僕は彼女の話に耳を傾けた。
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