7人が本棚に入れています
本棚に追加
ある日部屋に戻ると、
死んだ兄がそこにいた。
「え。お兄ちゃん…?」
お兄ちゃんは私の顔を見ると、「よぉ!」と笑った。
いや、笑ってる場合じゃなくて。
なんで居るの?
死んじゃったでしょ、だって。
何の違和感も感じさせず、生前と変わらない姿。
生きてる時に定位置だったパステルブルーのソファーの上に、兄はすっかり寛いだ様子でいた。
「…ゆ、幽霊?」
「はは。戻ってきちゃった」
「は?意味わかんない」
「お前冷静だな、意外と」
おかしいな、と首を傾げる兄に、私も同じ様に首を傾げた。
全く知らない他人の幽霊なら絶叫驚愕しただろうけど、身内の、しかもずっと一緒に暮らしてきた人物だと、どうも相手が幽霊だと実感が湧かない。
しかも私は、兄が死んだ時からしばらくの記憶が無かった。葬儀の時の記憶も、その後のバタバタした生活の記憶もさっぱり抜け落ちていた。
だからこそ、兄ももしかしたら生きてるんじゃないかと思ってしまうのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!