彼女に、僕が監督と呼ばれた日

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「あの、監督さんは、「6才のボクが、大人になるまで。」って映画、知ってますか?」  最初の質問に僕がこたえる前に、彼女からの次の問いかけがきた。  僕は彼女を知っていた、たしか同じクラスの同級生で、名前は御園ゆう(みそのゆう)。自己紹介で、映画が好きだと言っていたのをおぼえている。 「その映画は知らない。映画はまだあんまりみてないんだ。御園さん。僕、同じクラスの」 「すごいですね。「6才のボクが~」をみてないのに、撮ったんですね。それと監督さん。監督さんと私が同じなのは、クラスだけじゃなく、部活もそうみたいです」 「じゃ、きみも、映画研究部に入ったの」 「きみも、というか、部活は、昨日、仮入部した私の方が、一日先輩です。今日は部室が空だったんで、ここで映画でもみようと思ってきてみたら、先に監督さんがいて」 「その、監督さんって呼び方、やめて欲しいんだけど。ところで御園さんは、僕のアレは、どこからみたの」 「ほぼ全部ですね。声をかけようとしたら、ちょうど上映開始だったんで、最初から最後まで楽しませてもらいました」  アレを全部みたって。そ、それだけはカンベンしてくれ。僕は叫びだしそうになって、両手で自分の口をふさいだ。  御園さんは、僕の様子をしごく普通の顔で眺めている。 「クリエイターさんとしてご自分の作品に複雑な感情を抱かれるのは、理解できます。  でも、オリジナリティのある素敵な作品でしたよ。  私、映画に関しては自分を批評家だと思っているので、いい加減なことは口にしません。  私が言った「6才のボクが~」って作品は、監督さんの作品とすごく似ている映画なんですよ」      
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