彼女に、僕が監督と呼ばれた日

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 僕が見ていない「6才のボクが、大人になるまで。」について、御園さんは説明してくれた。  「6才のボクが、大人になるまで。」は、2014年に公開されたアメリカ映画だ。    ストーリーはわかりやすくて、映画スタート時に6才の少年だった主人公、メイソンJr.が、両親の離婚や再婚、義父の暴力などにもさらされながら、時には拗ねて反抗的になったりもしながら、やがては成長して、ラストは18才、高校を卒業し、大学へ進学するところで映画は終わる。  この映画の大きなポイントは、劇中で6才から18才まで成長するメイソンJr.の役を毎年、数週間ずつ撮影することで、12年間かけて一人の役者に演じさせている点らしい。  俳優、コルトレーンは12年間かけてメイソンJr.を演じきった。 「僕は、映画についてよく知らないけど、さすがに、そういうのは珍しいよね」 「私も他に知りません。もしあったとしても、それはドキュメンタリータッチの記録映画で、劇映画で本当に劇中の、12年もの経過年数と同じ歳月をかけて制作したものはないでしょう。  批評家にも絶賛され、数々の賞を受賞しました」  批評家を自称するだけあって、御園さんは映画についてよく知っている。  でも、そういう人は、同じ映画好きではあっても、ほとんど映画をみていない僕とは、映画に対しての感じ方がやっぱり違うと思う。 「12年間も撮影したなら、すごく長い映画になったんじゃないの。そんなの長すぎて退屈しないかな」  僕は正直に思ったままを言ってみた。
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