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「さて、帰ろうか。」
俺がそう言うと
「うん。なんか、今日はありがとう。私の急なワガママに付き合わせちゃって。」
「まぁ、いいさ。たまにはこういうとこに来てみるのも悪くないし。こっちこそ、ありがとう。」
本当、緋奈の行動力には感服する。おかげで一日が長く感じれた。
良くも。悪くも。
平凡な日々に呑み込まれたまま命が尽きるのは正直、たまったもんじゃないしな。
それに気づけた。
「でもさ、私正直、兄さんもっと長く生きてくれそうなんだよね。」
緋奈から、殺人鬼と真逆の意見が出て来た。
「ん?そうか?」
「うん。ただ、まぁ、なんとなくだけどね。きっと、私が現実から逃げちゃってるだけなのかも。」
声が少し、震えてきている。
「緋奈…」
俺も正直こんな人生で終わってしまうのは嫌だ。
最後で会わせてくれた、たった一人の妹のような存在を、余命半年前で悲しませてしまうからだ。
俺の人生で悲しむのは俺だけで良いはずだろうが。神様よぉ。
「だから…」
そう言って緋奈は俺の腕に抱きつく。
「出来るだけこうして、近くに居たいな。」
俺に向けて涙目で微笑む。
俺は黙ってもう片方の手で頭を撫でる。
俺は多分、残り半年。
これから、今までの分幸せになるんだろうな。
この状態のまま駅のバス乗り場まで向かうのは、正直、爆発しろという視線を感じる気がした為、近くのバス停を探しつつ歩いた。
というかこの城に居る段階で少しばかりそんな視線は感じた。
なんで兄妹という発想に至ってくれないのか。日本人、貴様等本当に怖いぞ。
そんな事を考えながら歩いていたら、国道沿いの歩道にあったバス停と遭遇し、無事に緋奈を家に送り届けることが出来た。
この間、腕にずっと抱きつかれていた。
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