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午前七時四十五分。
着替え、そして、朝食。
昨日通り平凡な一日の始まり方。
また昨日みたいに突然の出来事が起こる事を期待しつつも、何時ものような平凡を願う。
取り敢えず店に向かう為、玄関を開ける。
昨日の様に店の前に人がいる。
緋奈とは違って高めな身長。
すらっとしたシルエット。
そして白い髪。
ああ、これ期待の方が叶ったのか。かなり嫌な予感しかしない。
「乾さん、どうしてここがわかったんですか?」
恐らく人違いはない、と思って声をかける。
「ああ、やっと来たか。おはよう。あと、私の事は苗字で呼んで欲しくないな。あと、"さん"もいらない。お前さんの方が年上だからな。」
「お、おう。ってなんで俺が年上って事知ってるんだよ。俺はお前の歳知らないぞ。」
樹咲は戸惑いつつそう言う。
「うむ、まぁ職業柄な。なんとなく後をつけて、なんとなく色々調べさせて貰った。正直、家の中に入って話をしようと思ったが法の関係上、それはダメだからな。」
「人の後つけたり調べたりする職業って、なんつー職業だよそりゃ。」
呆れて言うと知抄は名刺を差し出してきた。
『乾探偵事務所』
その名刺にはそう書かれていた。
嘘だろ。
自販機が使えない彼女が、
そんなテレビでしか聞かない様な職業についているなんて。
俺自身、あんまりテレビ見ないから未確認生命体と遭遇した気分だ。
俗に言うUMAってやつか、本当に恐ろしいヤツだ。
こいつに食べられちゃうんじゃないか?俺。
「えーっと、確か昨日の話をしに来たんだよな。店開けるわけにはいかないから、家の方でもいいか?」
「なら、少しお邪魔させて貰おう。」
こうして、何気に初めて異性を自分の家に上げるのであった。
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