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「《紅蓮槍》!」
1つの気配が突然背後に現れ、若い男の声のが聞こえたとほぼ同時、圧縮された魔力と熱気が頭上を通り過ぎる。
あ、これは……避けねぇと。
これから自分に降りかかるであろう災いを予測し、俺は今いる地点から《転移》で10m程離れた場所へ移転する。
「グギァァァァァァッ!!」
轟く断末魔と、肉が焦げる臭い。
鼻から上を失った、狼と虎を混ぜたような巨大な猛獣は、その勢いと体重で近場の地面を揺らす程激しく倒れた。
暫く痛みにもがいたが、直ぐに絶命した。
「……あのままいたら、俺は下敷きだったな……」
動かなくなった猛獣をじっと見ながら、俺は一言呟く。
下敷きになったらなったで、この【邪神】の身体には無傷だろうし脱出は出来るが、わざわざ潰される理由も無い。
……乱入者は、このことを分かって攻撃したんだろうか。
吹き飛ばすような攻撃か、消し炭にするような攻撃とかじゃねぇと、巨大な体が襲うのは予想出来る筈なんだが……。
「おい、無事だったか?」
俺の近くへと移動したこの青年はどうやら気付いてないな。
青みがかった紫の髪、翡翠の瞳をした、鋭い目付きの青年。
特に特徴的なのは、右側の顔面に見える大きな火傷の痕だ。
一見近寄りがたい容姿を持つ男だが、一応猛獣に襲われそうだった俺を助け、無事を確認する辺り、正義感が強い真面目な性格かもな。
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