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内心だけで溜め息を漏らすと、視線の先にいる青年の言葉を素直に待つ。
「あー、良かったら俺が《瞬転》で村まで送ってやるよ」
彼は頬をポリポリと掻き、顔は反らしつつも目だけは俺に向けて提案した。
咄嗟の場合は除き、意外と人に優しくすることが苦手なのかもしれない、が。
……今は、悪いが余計なお世話だな。
《瞬転》というのは、俺が最初にいた世界でいえば《転移》みたいなものだが、中々高等魔法らしい。
他の世界では大体だったから、流れは同じでも《瞬転》とは一瞬だが言いにくいのは余談。
取り敢えず少し頭の中で逡巡したが、結局俺も使えるということにする。
「大丈夫です。僕も一応は使えますから。お気遣い感謝です」
だが、俺が答えた時に青年は怪訝な表情を浮かべる。
「凄いな、その歳で。……でも今歩いて帰ろうとしてなかったか?」
「ええ。あまり魔法は使いたくないんです。歩いて帰れる距離なのに使うと身体が鈍る気がするので。まぁ、いざ襲われれば《瞬転》使いますけどね。……因みに、貴方も僕と見たところ同じ位の歳でしょう?貴方も大分凄いと思いますよ」
予想済みの質問には、適当に理由をでっち上げる。
微笑みながら丁寧に話す俺を見れば、前世で関わった奴は全員目と耳を疑うことだろう……。
つか、そろそろ離れさせろ。
「……そうか。気を付けろよ」
ハァ、やっとか。
「と、言いたい所なんだが、今から俺もこの近くの村に用があるんだよ。俺も一緒に行ってもいいか?」
…………。
……運無いな、俺。
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