……第1章……

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 平凡な青年を演じていなければ眉を顰めた表情を露にするが、冷静に自重する。  依然表情は穏やかなままだが、頭の中では様々な対策案が巡っていた。  ……どうする?コイツが村に用があると言った時点で逃げ道は無くなったな。  一旦村まで同行させて、そこで別れた方が賢いか。  いざとなれば村人の記憶を弄ることも視野に入れた時点で、俺は同行を許可することに決定した。 「村に何の用なんですか?」 「依頼でな。ここにいる〈オフィエスト・フーマ〉を倒すっていうやつだ。依頼主が〈カーダ村〉の村長だから、依頼が無事完遂したことを報告しに伺いたくてな」 「成る程。〈オフィエスト・フーマ〉ってさっき僕を襲った奴ですよね。でも、僕徒歩なんですよ?」 「それに関しては別にいい。俺も歩きたかった気分だしな」  口だけは同行を求められた時にすらすらと動いていた為、思考時間の間に不自然は感じられなかっただろう。  会話に一区切りついた所で、俺は笑って口を開いた。 「分かりました。村まで一緒に行きましょう。ついでですしね」 「本当か?じゃ、早速行くか」  青年の表情は変わった様子は見えなかったものの、声色だけは僅かに高く変化していた。  嬉しかったのかは定かじゃないけどな。まぁ、心読めば分かるというのは別にして。
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