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学校前の長い坂道を自転車を押しながら飛悠は歩いていた。
すでに時計は9時を回っている。
「初日から遅刻とかマジありえねぇなぁ。」
春だというのに今日は妙に暖かい。
坂道を登っていると若干暑いくらいだ。
自転車のハンドルを持つ手が少しだけ汗ばんでいる。
飛悠の通うことになっている学校は、直線距離で約3キロ。
アパートからは一本道で普通ならたいした距離ではない。
普通なら・・・。
しかし、いかんせん学校は小高い丘の上にあった。
最後の500Mは坂道。
すこしずつ上がる自分の視界。
遠くまで見通せるようになっていく町並み。
飛悠のアパートの近くには会ったことのない親戚が住んでいるらしい。
飛悠の母親はそのおかげで一人暮らしを割りとあっさり認めてくれた。
あっさりすぎるほどあっさり認めたので若干の裏を感じるが---。
それは気にしないことにする。
「学校終わったら挨拶に行くか。」
都会とは言いがたい街並み。
坂道にキチンと並べられた桜並木。
軽く弾む自分の息と街並みそして桜の舞い散る様を楽しみながら飛悠は坂を上がっていく。
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