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坂の頂上、校門まで後50Mくらいのところまできた。
ご近所で評判の心臓破りの坂だけあってこの辺りまで来てようやく正門が見える。
あまりの暑さについつい上着を脱ぎ自転車のカゴへと放り込む。
ふとそこに人影が2つ。
飛悠の顔からサーッと血の気が引いていく。
校門の前に今や遅しと立っていたのは母親だった。
もう一人は知らない女の子。
「やっ・・・やぁ」
飛悠は引きつった笑顔を浮かべながら軽く右手を上げフランクに挨拶をする。
足取りは重さを増し少し手前で立ち止まる。
コツッコツッコツッコツッ。
ハイヒールを鳴らしながら母親が近づいてくる。
ひたすら全力でうろたえる飛悠。
ガシャン!
自転車を離し飛悠は防御の構えを取る。
そして観念の一言。
「顔はやめっ・・・」
メリッ。
鈍い音とともに母親のグーが飛悠のお顔にそこはかとなくめり込んだ。
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