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このところ城の女たちは、仕事を終えると一か所に集まって身を寄せ合っていた。 居間でも食堂でもなく、それは調理場か執務室であることが多い。 一か所に集まるのは厳しい寒さを凌ぐためでもあり、それは恐らくは心の寒さも同様であった。 誰もが口には出さず、だが降り続ける雪と外界から隔離されたこの状況に確かに怯えていた。 調理場や執務室を選んだのはリリーが慎み深い使用人へ配慮したからでもあり、また火を使う場所や狭い部屋の方が幾分か暖かかったからでもある。 彼女たちは囁き合うような声で他愛もない話をしながら、本を読んだり、編み物や刺繍に手を動かして時間を紛らわせていた。 誰もが互いを愛しみ尊敬しあっていたこの城で、しかし過酷な天候の元、聖書はなんの役にも立たないことに薄々気付きながらもその現実からは目を逸らしていた。 ――人が誰をも裏切らなかったとしても、天はこうして私たちを苦しめるじゃないですか―― ふとした時に浮かぶのはそんな罰当たりな考えであった。 その度にリリーは頭を振って不敬虔な考えを追い払い、急いで十字を切って祈る。 2人の使用人はそんな時、常にリリーに倣って一緒に祈りを捧げた。 それは悪とされることなど何ひとつしてこなかった彼女たちの、一体何に対する贖罪であったのだろう。
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