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城は村から見上げて考えていたよりも、随分と難儀な場所にあった。 ぐるりと山の裏側からまわり込むように坂を上り、険しい渓谷を頼りない橋を通って渡らなくてはならない。 「あなたはご自分の領地へ赴くのに、随分とご苦労なさっているのですね」 初めて城へ来た時に、リリーは思わずそう漏らした。 「なに、慣れてしまえば馬の足は速い」 領主がそう言って笑ったが、その時リリーは既に、初めて乗る馬の動きに目をまわしかけていた。 ふらつきかけたところを後ろからしっかりと支えられて、夫となったばかりの男を頼もしく感じながらリリーは憧れの城にやってきた。 歪な山肌の断崖に建てられたその城は、予想を遥かに超えて大きかった。 村の住民全員を収容しても余りあるのは間違いない。 下からは尖塔がひとつしか見えないが、正面から確認できるだけでもあと2つ見て取れた。 始めはそれが城の壁かと思った赤煉瓦は近づいてみれば城門に過ぎず、門を除けば城は村から見えた尖塔と同じ、ホワイトリリーの煉瓦造りだった。 城門をくぐると館はずっと奥にあり、両側は回廊のようになっている。 「こんな……」 驚きを隠さないリリーに、夫は気まずそうに苦笑した。 「先々代の趣味だったそうだ。私と使用人しか住んでいないのに広すぎた」
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