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リリーは小さな村の小さな家で、質素な暮らしをしてきた女である。
城内の煌びやかな黄金をあしらった壁画や至る所に華美な彫刻が施された内装は、嫌悪感すら感じられるものであった。
しかし実際には、領主は自分の代になってから、手離せる調度品の数々を全て売り払っていた。
巨大で豪奢な城の中は必要最低限の暮らしであることに、リリーはすぐに気が付いた。
領主が変わってから税が軽くなったとは、つまりこのためだったのだ。
使用人もたった2人と大きな城にそぐわぬ人数だったので、リリーは彼女たちがいくら拒んでも、日々一緒になって掃除や洗濯を続けた。
使用人たちははじめこの若い女主人の行動に戸惑いを見せたが、彼女の穏やかで優しい物腰に、徐々に信頼と尊敬を寄せていった。
ある時から、城には彼女の好きな花が飾られるようになった。
これは使用人たちからの、新しい女主人への敬愛の証である。
城にその年初めての雪が降ったのは、ちょうどその頃だった。
山の上だからだろう、村よりも早く冬が来るようだ。
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