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リリーは久しぶりにバルコニーに出た。 城に来た当初は少しでも時間があけばここへ来て、村を見下ろしては懐かしんだり寂しがったりしていたものだ。 だが2人の使用人と打ち解けた最近は、城内で作業をしたりおしゃべりに興じる時間が増えていたために自然と足が遠のいていた。 天気雪であった。 夕陽を受けて輝く郷の湖面を背景に、ハラハラと舞う雪花に魅入っていた。 今年の花は随分と大きく美しい気がして、身を乗り出して手を遠くへ伸ばす。 「こら、何やってる」 危ないぞ、と声をかけてきたのは、領地から戻ったばかりの様子の夫だ。 「お帰りなさい」 「ああ、ただいま」 リリーを後ろから包み込むようにして両手をバルコニーにかけた男は、しばらく自分の領地を見渡してから長く息を吐き出した。 「お疲れですか?」 「連れてきて早々、仕事がばたついてすまなかったね」 領主は民のための冬支度として、保存食や薪の買い付けに駆けまわっていたのだ。 結婚生活はまだ短いが、こうして2人で過ごすのはとても久しぶりに感じた。 「ようやく今日で落ち着いたよ」 夫の言葉に、リリーは労いを込めて微笑んだ。
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