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リリーはとても美しい花嫁だった。
母親譲りの絹のように滑らかな髪と、この土地では珍しいフォレストグリーンの瞳は殊の外美しい。
純白のドレスは彼女に良く似合った。
華美な装飾品をリリーは拒んだが、それは却って彼女の美しさを際立たせた。
集落の民を全て招待して、村の小さな教会で結婚式を挙げた。
領主として民と接することはあったが、あのように1人1人と近づき親しく言葉を交わしたのは初めてである。
リリーが村で皆から愛されてきたことを、彼は彼の民との会話から実感していた。
「――さあ、中に入ろう。大分身体が冷えているじゃないか」
静かに舞う雪の花が、少しずつ山を白く染めていく。
名残惜しそうにもう一度後ろを振り返るリリーの肩を抱き、
「本格的に寒くなる。毎日見れるぞ」
と優しく言って聞かせた。
「それもそうですね」
頷き微笑みを交わし、若い夫婦は手を取りあう。
寄り添った人影が、静かに肩を震わせてバルコニーの中へ消えていった。
それは美しく静かな、満ち足りた時の入口であった。
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