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「例えば、好きな人に告白をするという事象があるとして...」
そう前置きすると、独自の理論を展開し始めるこいつの横顔は本当に高校生なのだろうか?
悔しいけど、恵まれた体躯に爽やかな笑顔。
人懐っこい性格はこのクラスのムードメーカーらしかった。
確か、アメフト部って言ってたか。
「告白に至るまでの過程で、アプローチの方法なんて五万とある。
そして、告白の仕方も、その伝える言葉、場所、時間と条件付けしてったら、何万通りにもなる。
けど、答えはYesかNoの一つしかない。」
熱く語るその横顔は大人びている。
「お前さ、馬鹿だろ?」
「え?」
「YesとNoで既に二つだろうが。そもそも、それ以外に、何のためにまずは友達からって常套句があんだよ?
人間の感情なんてもんはな、きっちり割り切れるもんじゃねぇんだよ!!」
「そっかぁ~ミホちゃん頭いい~!」
「てか、誰がミホちゃんだよ!?先生を付けろバカタレが!!」
俺の頭の上でヘラヘラと笑う神戸はまるで犬みたいだ。
(でかいから、大型犬か?)
そんなくだらない話をしていたら、あっという間に職員室に着いた。
俺は両手が塞がっている奴の代わりに扉を開けようと一歩前に出た瞬間、職員室のドアが開いた。
「自動ドア~♪」
頭の上から神戸の暢気な声が聞こえてきた。
ノートの山を片手で軽々と抱え、反対の手で造作もなくドアを開けた。
その仕草に不意打ちを喰らったせいだ。
そうだ。
勝手にドアが開いたからちょっとびっくりしただけだ。
逸る心臓を抑え何事もなかったかのように、俺は自分の机へと歩みを進めた。
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