第一章・真衣と拓実

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真衣を通じて拓実と言葉を交わすにつれ、その誠実な人柄を私はだんだんと知るようになっていった。 真衣の言う通り、拓実は優しい人だった。 野球部のキャプテンでピッチャーの拓実は、先生方からも信頼され、後輩からも慕われ人望も厚い。 甲子園出場をかけた県の大会では、拓実の活躍で決勝戦まで勝ちあがった。私も、真衣と一緒に声が枯れるまで応援したが、結局、私立のスポーツ名門校が五年連続の甲子園出場を決めた。 それでも、拓実の活躍は学校では大いに称えられ、地元の新聞やTVにも取り上げられて、ちょっとした有名人になった。他校にもファンが増えた。 拓実は決して流行の繊細な美少年タイプではなかったが、きりっとした眼元はりりしく、鍛え上げられた体は逞しく、男らしかった。 だから、入学早々拓実ファンの先輩たちに真衣が嫌がらせを受けたのも仕方が無いことなのかもしれない。
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