41人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
拓実を好きになるまで時間はかからなかった。
拓実は本当に魅力的な人だったし、それに、真衣と一緒にいると、嫌でも拓実の良さがわかってしまう。
野球の試合を応援しに行けば、チームを率先して盛り上げ、まとめる拓実がいる。
拓実の放つ白球は、まるで彼の人柄を表すかのように真っ直ぐで力強かった。
勉強も出来たし、学園祭やスポーツ大会でも活躍し、いつも目立っていた。
完璧だった。
かと思えば、やんちゃな一面もあって、ふざけたり、冗談を言って笑わせたりと、拓実といる時間は本当に楽しかったのだ。
何より、すれ違うたびに感じる、あの拓実の熱い眼差し。
勿論、それは私に向けられたものではない。私の隣にいる真衣を拓実はいつも愛おしそうに見つめていた。どこにいても、どんなに遠くからでも、拓実は真衣を、私の隣りにいる真衣を探していた。その視線を感じるたびに私の心は痺れ、そして落胆した。
こんなにも真っ直ぐに拓実に愛される真衣に嫉妬した。あの眼差しにいつも優しく包み込まれ守られている真衣が妬ましかった。
もちろん、それがいけないことだとはわかっていた。
でも、好きになる気持ちは止められなかった。
最初のコメントを投稿しよう!