第一章・真衣と拓実

28/30
41人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
それまで私は、他の誰かを羨ましいと感じたことがなかった。 勉強は特別できるほうではなかったけれど、容姿には恵まれていたし、家も普通よりは裕福で何不自由ない生活をしていたから。 でも、拓実と出合って、私は初めて他の誰かになりたいと思った。 そう。私は、真衣になりたかった。 生まれ持った幸運の全てを引き換えにしても、彼女と入れ代わりたかった。 たった一文字しか違わないのに、拓実が好きなのは真衣で私ではない。 そんな当たり前の事実すらもどかしかった。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!