全力少女、走る。の巻

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耳元にかかる吐息。前と、腰に回された腕。首に当たるサラサラとくすぐったい髪。 な、なにこれ。どういう状況?! えっ、ちょ、まっ、えっ? つまり、なに。あたしあれですか。女の子憧れのあれですか。 う し ろ か ら だ き し め ら れ て る ? え、うわ、うそ! 思わず、暴れだしてしまったあたしに後ろの人が「じっとしてて」ボソリ。 おと、こだああぁぁあ!!! ぎゃあああああ!あたしは、美緒ちゃんとは違うんだ!こんな状況初めてなんだああ!いや、美緒ちゃんのそーゆーこと全く知らないけど!けど!とにかく、あたしは、そーゆーこと全くないのに!こわい!とりあえず、こわい!なんだこりゃ! 「...旧音楽室にいったぞ」 「今日は、諦めるか...」 「...ああ、だな」 なに?!なに!なに、この旧音楽室の威力!ある意味すっごい恐怖だわ! パタパタと、帰っていく足音が聞こえる。その足音にあたしは思わず安堵の息を洩らした。 「大丈夫だったか?!」 「え?あ、はい...ありがとうございま、え、しお、ん」 「ん?」 その男、紫苑はまあ、なんというか幼馴染み。今は違うけど。小さい頃は結構ずっと一緒にいた。 その男、もとい遠山紫苑(トオヤマ シオン)はあたしの顔を訝しげに見つめてから、叫んだ。 「ああ!!ヒカル!」 「久しぶりだねー」 「だな!」 紫苑は、あたしのことをヒカルと呼ぶ。なぜ、と言われれば紫苑があたし並にバカだから。としか言い様がない。
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