0人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
あの子を一番に見つけたのは、隣にいるアイツだった。
無口なあいつは。いつの間にか隣から消えていた。
「っ、えっ?冬夜(トウヤ)?」
全くあいつは、人が話してる最中にいなくなりやがって。ぱ、と後ろを向けばじぃーっと一点に釘付けのアイツ。
「冬夜?何があった?」
「いぶき...あれ...」
ユラリと上がった冬夜の手の先にいたのは、一人の女で。
その女のやっていることを俺は理解できなかった。いや、違う。やっていることは理解できた。ただ、なぜそれをやっているのか。それが俺には理解できなかった。
ただ、明確なことがひとつある。
その女、誰よりも美しく思えた。
その女、笑顔で、落書きを消していたのだ。
「って、ああ!また冬夜消えてる!」
また横を見てみればいるはずのアイツはやはりいなくてどこまでも勝手だ、と痛感する。グルリと探せば、確実に女の方へ近付いている。俺はその背を走って追いかけた。
最初のコメントを投稿しよう!