一乃家

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「祐にい、今日は遅くなるのか?」 家を出て行こうとした祐介を呼び止めたのは、三男の美咲だった。 祐介はのそっとした動きで靴を履きながら、振り返らずに言った。 「今日は、遅くならない…と思う」 「ラジャー!」 美咲は敬礼の形だけ取るとそのままくるっと一回転してみせた。これだけ見るとただの小学生だ。 「行ってきます…」 「はーい」 祐介の背中を見送ると、洗面所から亮輔が歯を磨きながら出てきた。 まだ寝ぐせの付いた、気怠そうな顔をしている。 「裕にい、今日はどうするって?」 片手で歯ブラシを持って、片手で寝ぐせを整えながら言うと、美咲は「おはよう、亮輔」と言った 「今日は普通だってさ」 軽く息をつきながら、亮輔は言った 「じゃあ、今日のご飯の当番は裕にいだね」 「ああ!裕にいのご飯まじおいしいよな!」 「うん」 半ば適当に相槌を打つと、また亮輔は洗面所へ向かっていった。 「亮輔、俺もう学校行くわ!」 「はあ、早くない?もう行くの?」 まだ部屋着の亮輔に対し、美咲はもう制服を着ていた。 玄関の廊下に置いておいた、スクールバックを持ち上げると、楽しそうに言った。 「弥里と約束してるからな」 「ああ、そっか了解、行ってらっしゃい」 美咲は飛び出すように玄関を飛び出していった。
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