第一章・笑顔の裏で

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「ん?どうした?」 黙ったまま、袋の中を覗き込んでいる私に、拓実が声をかける。 もう限界だった。 「ま、真央!」 私は、咄嗟に袋の中に顔をつっこんだ。 「ばか、何やってんだよ」 「あまりにも美味しそうなので、かぶりついちゃいました」 あんまんを、まるで犬のように咥えたまま袋から顔を出した私に、 「それ、レンジでチンして食べるやつだぞ。ばーか」 拓実が呆れ、笑っている。 「ふぁやく言ってよ、もう!」 「真央の食いしん坊」 「うるふぁいなあ」 ぼそぼそのあんまんが喉にひっかかって上手くしゃべれない。だから、声が震えていても変じゃない。 大丈夫。私は、きっと、上手に笑えている。
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