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◇
踏み均されただけの道とも呼べないような道を見つけた。
道なりに下ると、やがて大きな木製の鳥居が姿を現した。
元は木の色だったのだろうが、年月が
染み込んだかのように黒ずんでいる。
鳥居を抜けた所あたりから、道は平坦になり、はっきりそうと分かるほどに空気の質も変わった。
木々の背は低く数も疎ら。
先ほどまでのどろりとした緊張感はなくなっていた。
どうやら山を出たようだ。
木立を透かして遠くの方の田園風景が見える。
カナカナカナという蝉の声。
さらさらと流れる川の音。
いつの間にか雨は止んでいたが、陽は遠くで真っ赤に焼け、あたりはすでに薄暗くなっていた。
一時間ほどは歩いていた。
これだけ歩いたというのに全く疲労を感じてはいなかった。
やがて木立が開けた。
そしてそのすぐの場所に丸太組みの小屋が忽然と立っていた。
何故だか自分はここに来ようとしていたのだと思った。
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