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「裏の森に入っちゃダメよ」 聞き飽きたお母さんの小言。 私は「はーい」と返事をしながらも、友だちのかなちゃんたちとそこに行くことを考えながら三土間で運動靴を引っ掛ける。 まるで入場ゲートのようにそびえる古ぼけた大鳥居をくぐって入っていくそのこんもりとした小山は、禁止はされていたが、この辺りの子供たちの格好の遊び場になっていた。 今にも降り出しそうな空模様だ。 私は急いでいた。 畦を抜け、牛舎の前を横切り走る。 かなちゃんの家はウチから十分はかかる。 もし雨が降り出してしまえば、かなちゃんは親から外出を止められるだろう。 心配していた雨が降り出したのは、無事かなちゃんを誘い出して他の友だち達と合流し、ようやく森の鳥居の下を通ろうとしたその時だった。 ぽつぽつと頭のてっぺんを叩いた雨粒はすぐにその数を増やし、林道を数メートルも進まないうちにまるでバケツをひっくり返したかのような篠突く雨へと変わっていた。 夕立だ。 この時まで(そして、この後にも)、私はこの森で雨を経験したことはなかった。 他の友だちも皆そうだったろうと思う。
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