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授業が終わったと同時に終礼にも出ずに教室を飛び出した。
先に教室を出て職員室に戻っていくさっきまで授業をしていた教科担任の先生を追い越し、その先生に目を見開いて驚かれるほどに私は全速力で廊下を走り抜けた。
自転車置き場に置いてある自転車に焦って嵌まらない鍵をもどかしく思いながら、鍵を開けてすぐに飛び乗り帰路についた。
制服のスカートがひらひらと風にたなびく。
どんどん自転車を加速させながらとてつもない罪悪感に襲われていた。
それはお父さんの誕生日を忘れてしまっていた、ということでも、おめでとうをまだ言っていないことでもない。
上手く言い表せないがもやもやとした疼きが胸の中でくすぶっていた。
「(自分の誕生日は一度だって忘れたことないのに)」
そう思うとことさら罪悪感が大きくなって、何故だか無性に涙が溢れそうになった。
私は今日一日を何でもないただの平日だと思って、無意味に過ごしていた。
けれどお父さんにとってはそうではない。
年に一度の特別な日なんだ。
私にとって特別じゃない日でも、今日はお父さんにとって大切な日だった。
普段そこまでお父さんと話しているとか、仲がいいとか、そういうんじゃない。
そういうんじゃないけど、ここは忘れてはいけない絶対のラインだった。
家に急いで帰ったとしても、帰りが遅いお父さんが早く帰ってきている可能性なんて皆無に等しいのに、それでも家に急ぐ足を止めることができない。
さらに強くペダルを踏んだ。
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