第1話

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家に帰れば案の定お父さんは帰ってきていなくて、年度末で忙しいお父さんが帰って来たのは結局1時を過ぎたころだった。 私は12時を過ぎたあたりで、お父さんの帰りを待っていることに意味を見出せなくて寝てしまった。 それでも気になって寝付けずにいた私は聞き耳をたてて、玄関の扉が開く音を今か今かと待っていた。 けれど帰って来たお父さんを出迎えることはしなかった。 翌朝、もやもやとした気持ちで起きて、リビングに行こうと廊下を歩いていると、私と入れ替わるようにリビングから出てきてすれ違ったお父さんはすでに出勤の支度を整えていて、真っ直ぐに玄関に行こうとしていた。 「お父さん、……おはよう」 何気なくリビングの入り口からお父さんが玄関で靴を履いている姿を眺めていると、私がそこにいることに驚いたのか、目を見開いたあと 「おはよう、いってきます」 とにこっと笑って出て行った。 小さくいってらっしゃいと言った私の声は聞こえただろうか。 結局私はお父さんに「お誕生日おめでとう」の一言が言えなかった。 思えばその年を境に私はお父さんの誕生日を祝わなくなってしまった。 日付を見て思い出すこともなくなってしまった。 その日を境に私は変わってしまったのかもしれない。 その朝、痛烈に感じた虚無感は今だ私の胸の中に渦巻いている。 今なら言えるかもしれない。 そう思える年はあれから歳月を重ねた今でも全く感じることが出来なかった。 だから私は――――
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