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俺がサークルでお世話になっている加藤先輩に彼女を紹介する事になったのは、内心嫌々だった。だって恋する彼女の傍いたくて、偶然を装おって一緒にいたときだったから……
彼女と出会ったのは大学入試のとき。
消しゴムが見当たらなくて、慌てふためいてカバンや筆入れの中を探していた俺を見て、隣にいた彼女が自分の消しゴムを半分に割って貸してくれた。
そのまま無視すれば、ライバルがひとりが減ったかもしれないというのに――そんな彼女の無償の優しさが、俺の心にじわりと残った。
試験が終わってから隣の彼女に、名前と受験番号を聞いてその日は別れた。
合格発表の日はもみくちゃになりながら、自分の番号と彼女の番号を確認した。お互いの番号を見つけ合格したことに、ひとりで心底喜んだ。
そして入学式の当日、大勢いる入学する奴らの中から彼女を捜しまくった。
必死になり捜していると、大勢の中からすぐ見つける事に成功。他のコに比べると一回り小さい彼女だから、見つけやすくて当然なんだけど。
「廣田さんっ!」
急いで彼女の元にに駆け寄った。くるりと振り返って、とても嬉しそうな顔をしている。
その笑顔を見て急速に心拍が上がった。すっげぇ可愛すぎるだろ。
「水留くんも、やっぱり合格したんだね」
「本当にあのときは、お世話になりました」
「消しゴムがなくても、合格してたんじゃないの?」
「そんなことないよ。ホントに助かったんだって」
まるで昔からの知り合いみたいに、会話が弾む。気付いたらお互い、呼び捨てで呼び合うようになっていた。
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