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そう――俺は出会った時から廣田の事を意識していたのに、アイツときたらまったく、俺の事は眼中なしって感じだった。良くて友達以上恋人未満の関係と言える。
いい雰囲気に持っていってもナチュラルにはぐらかされて、それ以上の進展がないまま、1年以上経っていた。
無駄に足掻くだけダメなんだろうか?
悶々と悩んでいるところに俺が憧れている、加藤先輩が登場したのである。
「よぉ洸(アキラ)、彼女連れて、どこに行くんだ?」
たまたま廣田と課題を一緒にやるのに、カフェテリアに行こうとしていたときだった。
廣田が眉間にシワを寄せて、ぎろりと睨む。彼女じゃないしという自分なりのアピールだろう。
「加藤先輩、彼女は友達の廣田さん。加藤先輩はバイク乗りのサークルの先輩なんだ」
お互いの説明を俺がしながら、ふたりの様子を伺った。廣田が何となく、ポーっとしているように見える。
分かるよ、加藤先輩は無条件に格好良い。それに比べたら俺はどうせ、お子ちゃまだよ。
「洸、今晩やる定例会いつもの場所でやるから、出席宜しくな。もし良かったら、廣田さんもどう?」
「定例会って?」
「定例会ってゆ~飲み会だよ。次のツーリングの場所を決めるのに」
俺が廣田に渋々説明する。きっとふたりが繋がってしまったら、必然的に仲良くなるような気がしてならなかった。
「私バイクに乗れませんが、出席して大丈夫なんですか?」
小首を傾げながら加藤先輩に聞いている廣田を見て、すっごく複雑な心境に陥る。俺にはそんな、可愛らしい仕草したことがない。
「女のコのメンバーは他にもいるんだけど、バイトが入ってるとかでメンツ足りなくて、盛り上がりにかけるんだよ。ほら洸も頼めって!」
正直、出てほしくない……さっきから廣田のヤツ、加藤先輩を意識しまくっているじゃないか。
「バイク乗りに悪いヤツいないから、大丈夫だよ」
ポツリと呟く渋々な状態の俺の心。それを隠しながら頼み事をするのって、意外と大変だ。
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