始まりの赤

2/3
前へ
/40ページ
次へ
学校から帰った俺を待ち受けていたのは、片目が空洞になった兄の悲惨な姿だった。 「兄、さん・・・?兄さんっ!!返事をしてくれ兄さん!!」 何で、何で俺の家族がこんなことに・・・!? 「何故だぁぁあああああ!!!」 どうして、何で。 その疑問だけが俺の脳内を埋め尽くす。解の無い問題が思考を貪り吐き気を催す。 知りたいか? 突然の声に少し驚いたが、空耳で無いと直感して平静を保とうと長く息を吐く。 脳内に直接話し掛けてくる存在が、近くにいるはずだ。 「ッ誰だ!姿を見せろ!」 知りたいか? 声の主は、それしか問わない。 「まさか貴様、犯人か!!」 それは違う。だが、事情は知っている。 ・・・疑わしきは罰す。 そうか。ならば、そちらに降りようではないか。 「・・・降りる?まるで意味がわからんぞ!」 そう叫んだ後に突然人が現れた。 「やっぱこの世界は居心地が悪いな」 煙草に似てない煙の臭いが鼻に付いたが、今は気にしてはいられない。 「・・・・・・お前が先ほどの声の主か」 そして一瞬で理解し、肝を冷やした。こいつはきっと人じゃないと。神経を逆撫でしたら一瞬で殺される、と。 理解した瞬間に身体は一歩退いていた。 「んー、わかる?でさ、俺はお前の兄貴に会ってるんだけど」 特に気にしてもいない様子の目の前の男が、いきなり妙なことを言い出した。 「兄さんと、だと?」 こんな友人は兄の口から聞いたことがない。いや、友人ではないか。 「そうそう、よくわかってるじゃないか」 余裕の笑みを浮かべて俺を見るそいつの雰囲気は、少々楽しそうだった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加