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二人しか居ない男は相当イレギュラー化されているようだ。
「よう。十也、だっけ」
人の良さそうな顔で俺の前の席に座ると、椅子を俺の方に寄せてきた。
「何か用か?」
「いやさ、特に用って訳じゃないんだけど・・・」
仲間とかが欲しい奴のよくやる行動である。
「馴れ馴れしい奴だな、お前は。俺とお前は昨日今日会ったばかりだろうに、初めから親しく振る舞うのはやめてくれないか」
よく知らない他人と会話をするのは好きじゃない。言葉の断片から思考を読み取られる可能性があるからだ。
思考が読み取られれば、戦闘や取引に影響があるかもしれない。故に出来るだけ回避したい。
・・・軍の諜報部の規則はこの身体に刻み込まれているようだ、と言うことを確信する。
「あ、悪い・・・」
バツの悪そうな顔をしている織斑だったが、目蓋を閉じることで視界をシャットアウトした。これで簡単に話掛けられることもないだろう。
俺は何も考えずに座っていると、扉が開いた。
開いた奴、否、人の姿を見て、不覚にも驚いてしまった。
「教、官・・・!?」
その呟きを前の男は見逃さなかったようだ、背筋が僅かながら動いた。
織斑の耳が良かっただけなのか、他は誰も気付いてない。
俺も、そして織斑も、ただ単に驚いただけに見えたのだろう。誰も何も言わない。
強いて言えば、教官、織斑千冬がこちらを一瞥した際に睨みを効かせただけだ。
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