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「おい!!」
「はっ、…此れは…義兄上!」
「何遍呼んだと思ってる。」
「申し訳ありません、あの御方を…信長様を想い始めますと、つい…」
「確かに素晴らしい御方だが、溺れ過ぎては己が道を見失うぞ。」
「肝に銘じておきます。」
そうして、呼ばれた修道服の男は胸元で十字を切り、何かに祈りを捧げた。
「全く貴様の数奇は、業が深いな。」
「未だ未だ、義兄上の足許にも及びません。」
「目指さずとも良い。俺は他人(ひと)とは、違う道を往く。」
「私も、此の道では同様に振る舞っていますから。」
「…生意気な。」
「開戦ですか?」
肩を並べ、後ろに垂らした長い黒髪を風に靡かせ、表情を武士の其れへと戻す。
「未だだ。ただ、動きはあった。」
「戦の世とは言え……己の主君と刃を交える事になろうとは。」
「俺とて、義理の兄を敵に回すとは夢にも思わん。」
「信長様は、何と。」
「俺が居るのだ、察せ。」
「……何卒、御武運を。」
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