【冷め行く夜の気配】

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  「あの、話…聞いてます?」 「!」 声に呼び戻されてはっと顔を上げたのは 「茶の湯の最中に考え事たぁ…秀吉。手前ぇ、茶ぁ嘗めてんな?」 「す、済まない。」 豊臣秀吉。 主君・織田信長に代わり時代の総括を勤める男だ。 「何か、私に至らぬ事象(こと)が?」 「違うんだ右近。少し…」 「言い訳たぁ随分だな。手前ぇが教えろっつうから、わざわざ弟子まで呼んで時間割いてやってんだぞ。あ?止めるか。」 「謝ったろう。そう怒るな、利休。」 「ったく…。だからあの連中には関わるなと言ったんだ。」 「……。」 「ついでだから聞いてやるが…お前、此れから如何すんだ。」 「…其れを今、考えていた。」 「で、答は。」 「……。」 「…出てねぇのか。」 「最悪だな。」 利休は言うなり大きな溜め息を吐いた。 「おい、高山。」 「はい、先生。」 「手前ぇの見解聞かせろ。」 「全ては、主の御導きのまま。」 「…あぁ、そうだお前。」 「話に成んねぇ奴だった。」 利休は再び溜め息を吐いて、手元の扇子で自らの肩を軽く叩く。  
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