7人が本棚に入れています
本棚に追加
「武運…か。」
「其ればかりも、難しい世の中になりましたね。」
「為ればこそ、同じ道を往く俺や貴様でなければ止められん。其れが信長様の御判断だろう。」
「左様…でしたか…。」
義弟が僅かに眼を臥せた。
其の動作を認めた人物、名を古田左介と言う。
軍の中に在り、使い番として動く立場から此度の戦の中枢を担っている。
常に完璧を求められる今の時世に於いて、古田には如何なる綻びも見逃す事は出来ない。
暫時を挟み、話を半ばに戻すなり義弟を即座に問い質した。
「異論があるか。」
「滅相も無い。ただ、此度の沙汰…武人の顔で罷り通る事象(もの)か・と。」
「…何?」
「荒木村重の業は…其れ程までに深い。」
低く、何かを見据える様に呈する義弟。
古田は其のまま、見下ろす位置で話を続ける。
「戦では解決せんと云う事か?」
「あくまで私の勘ですが。」
「かと言って、宗匠の手など借りらるるまい。」
「私は、其れも一手と」
「…長房。」
最初のコメントを投稿しよう!