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はっ、と
名を呼ばれた義弟が再び義兄の顔を見上げた。
「貴様…荒木だけでは足りず、俺にまで刃を向けるか。」
「申し訳ありません。」
「言葉が過ぎました。」
高山長房――――数奇に揺れる灯火は未だ僅か、迷いの中に在る。
「余計な口を挟んで、武士の誇りまで蔑ろにする様では本末転倒だ。」
「はい、義兄上。」
「まぁ……俺は偉そうな口を叩ける立場にも無いがな。」
古田は敢えてそう言い淀め、語る程に重きを増す話を締め括った。
「いいえ。確と此の魂に刻んでおきます。」
余韻を拾う高山が、改めて古田に十字を切り祈りを捧げる。
「成り上がれずはただ、同じ穴の貉だ。先ずは此の戦国…何としても生き抜かねば。」
「はい。」
「…所で、長房。」
「何でしょうか、義兄上。」
「如何様に持て成せば、荒木は俺に靡く。」
「……。」
「身に余るか。」
「…いいえ、あくまで武士として持て成すのであれば……其のままで宜しいかと。」
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