第二章・夏の記憶と罪

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「拓実ってば、真央があんまり綺麗だから驚いてるんでしょう?」 真衣のジョークに、私の胸が期待で高鳴った。 「ばぁか。二人とも、馬子にも衣装だなって思って見てたんだよ」 しかし拓実は、少しも動揺せず、いつも通り私たちを子供扱いした。 「ひっどぉい。馬子にも衣装だって、真央」 「ほ、本当、失礼しちゃう!」 私は何を期待していたのだろう。浴衣を着たくらいで、拓実の心を揺るがすことができるわけがないのに。 少し残念だったが、 「ははは。お詫びにカキ氷おごってやるよ」 この拓実一言で、私も真衣もすぐに機嫌を直した。 いくら背伸びしてもやはり子供だったのだろう。
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