第二章・夏の記憶と罪

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祭り会場は熱気に包まれていた。誰もが皆、今年初めての夜店に気分が高揚しているように見える。 勿論、私もだ。お祭りは大好きだ。人ごみだって嫌いじゃない。賑やかな場へ行けば辛い事や悲しい事も忘れられる。しかも、今日は隣りに拓実がいる。浮かれないはずもない。 制服姿の高校生に混じりながらヨーヨーをすくい、りんご飴を舐め、たこ焼きを食べ、そう広くもない祭り会場を何往復もした。履き慣れない下駄にすりむいた足の指がひりひりしたけれど、そんなことより喜びの方が断然大きかった。 「まだ食うの?」 「締めはカキ氷って決まってるでしょう」 カキ氷屋にできた長蛇列を尻目に、拓実は苦笑いし、「コンビニで買えば?」と呆れた。 「わかってないなぁ。ここで買って食べることに意味があるんだよ」 待つことなど、私は少しも苦じゃなかった。むしろ、少しでも長くここにいたい。 こうして拓実と外にいられるのが嬉しくて、楽しくて、私は面倒くさがる拓実の手を引いて、列の一番後ろに並んだ。
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