第二章・夏の記憶と罪

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この屋台のカキ氷機は昔ながらの手動式で、出来上がるのにずいぶんと時間がかかる。頭に白い手ぬぐいを巻いたおじさんが、太く筋肉質な腕でレバーをごりごり回すのを私は背伸びして覗いた。 白くてこんもりと高い氷の山が色とりどりのシロップにお化粧をされるのを見て、ため息がこぼれる。目に眩しい、鮮やかな夏の色彩。 小さな子供に負けじと、私も、何味にしようかな?なんて、真剣に悩んだりする。そんな私を見て、ガキだなぁと拓実がからかう。 なんて、幸せな時間なのだろう。 けれど、その幸福感は何の前触れもなく、ぷつんと音を立てて途切れた。 私の番まであと三人というときだった。突如、脳裏に懐かしい記憶がはじけたのは。 まるで水槽の中に様々な絵の具を落としたみたいに、遠い日の出来事が鮮やかに甦っていく。
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