第二章・夏の記憶と罪

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着付けの終わった後、私はひどい後悔にかられた。 真衣に貸したそれは、紺色に赤と紫色の蝶が描かれた子供っぽいデザインで、しかもセール品だった。一方私のは新品で、赤字に大輪の白い朝顔が咲いたブランド品。並ぶと、その品物の差は素人目から見ても歴然だった。 私は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。こんな子供っぽい浴衣を貸すなんて、真衣を傷つけたかもしれない。ばかにしたと思われたかもしれないと心を痛めたが、しかし、それは取り越し苦労だった。 「ありがとう、本当にありがとう」 真衣は何度も繰り返した。そして、嬉しそうに鏡の前でくるくると回るのだった。 なんて、純粋な子なのだろう。 そんな真衣の姿に、私は自分の浅はかな考えが恥ずかしく、胸がいっぱいになった。 私だったらきっと、それを着るくらいなら制服で行くと言っただろう。地味で古い浴衣なんか着たくないと感じたかもしれない。 でも、真衣は違った。人の好意を素直に受け取ることのできる、心の綺麗な女の子だった。
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