第二章・素直になれたら

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あの日以来、悠馬が私に自分の気持ちをぶつける事は無かった。 職場では軽口も言い合うし、たまにご飯やお茶をすることもあるけれど、その時は誰か同僚も一緒で、二人きりではない。 育児休暇を取っていた看護師も復帰し、激務にもピリオドが打たれた頃、見覚えのある顔が入院患者としてやってきた。 「オーマオチャン!」 「あれ?シスター!なぜ、ここに?」 「彼がね、ここの病院に移ったよ。だから私、オミマイネ」 「見舞いに来いなんて頼んじゃいねーよ」 ベッドの上で憎まれ口を叩いたのは、隣りの施設で暮らす少年だった。 初め、私はこの少年があの時の(ぶつかって手をすりむいたときだ)少年、勇気だとは気づかなかった。 ただ、大学病院から持て余された問題児がやってくるとは聞いていたので覚悟していたが、やってきたのが彼で正直拍子抜けした。 こんな小さな子に手こずるなんて大きな病院は人手が足りないのだとしみじみ思った。
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