第二章・素直になれたら

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「まったく、ここは最悪だな。狭いし、暗いしよ」 片足を固定された無防備な姿の勇気が室内を見回し舌打ちをする。盗んだ原付バイクで単独事故を起こし複雑骨折したのだ。手術も検査も運ばれた大学病院で済ませてあるのであとは安静にしていればいい。 「くっそ、息苦しいぜ。年寄りばっかりだし、看護婦もブスだし、おばさんばっかだし」 さっそくこれだ。 かちんときたが、なるべく冷静に、 「ブスで悪かったわね。どうせおばさんですよ。でも大学病院よりは部屋の人数だって少ないわよ」 「ああ、そうですね。八人部屋からの四人部屋。半分だ。けど、その分部屋が狭いから同じだよ。個室ねぇのかよ。ったく。しかも、廊下側だしよ」 ぶつぶつ文句を言いながら、勇気が出された食事を箸でかき混ぜる。それにしても、なんて無作法なのだろう。私が驚いていると、 「ヒジ、つかないで食べなさい。カッコワルイ。あと、箸の持ち方変ネ」 すかさずシスターが注意した。
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