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空高く昇ったまるい月が薄く伸びた雲の間から顔を出す
いつもなら鈴虫が鳴き心地よい風が吹く草原は、月明かりに照らされ赤黒く染まっていた。
一面に広がるのは一見普通の狼に見えるが、あるはずのふさふさした毛は黒く光る鱗に覆われ、口から黄色い牙が30cmははみだし尻尾は黒い棘の固まりとなっている。
その生き物が100にも及ぶのだ。
しかし、その大半は赤い華を散らして横たえている。
その黒い世界の中、動く塊があった。
いや、それは人だった。
フードを深く被り、異形の狼たちを斬るたびにマントは揺れ、より黒く染まる。
その手に持つのは鈍く光る刀。
その者は場を圧倒し、月を背に鱗の山の上に立つ姿は王者そのもの
その者を人は「覇王」と呼んだ
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