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 クニが呆然(ぼうぜん)として口を開いた。 「おれにはどうしてもスリランたちが犯人だなんて信じられない。おれたち、学習室でいっしょに微積分とか勉強したよな。カイのやつ、おれより数学が苦手で、ジョージが何度教えても弾道曲線の問題が解けなかった」  タツオも覚えていた。シャープペンシルで頭をかきながら、困ったようにウルルクの少年は笑っていた。昔から数字が大嫌いなんだよ。こんなもの戦場ではコンピュータにまかせればいいじゃないか。そうだろ、タツオ。カイとジャン・ピエールが自分の命を狙う銃撃事件を起こすとは、とうてい信じられない。  ジョージが低い声で柳瀬波光(やなせなみてる)に質問した。 「自白がとれた以上、ふたりの有罪は間違いないですね」  進駐官を裁く軍事法廷は、ほぼ100パーセント近い確率で被告が敗訴する。裁判になれば必ず敗れるのだ。情報保全部員はあたりまえのようにいった。
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