第一話【カレーライス】

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「レトルトのカレーならすぐ用意できますが……チンしましょうか?」 「ああ。そうしてくれ。 カレーだ。僕はカレーが食いたい。カレーなんだよ、世界は」  やった! 初めてマサヒトさんと会話ができた!  何だ、彼はカレーが食べたかっただけなんじゃないか。  その調子だ香織。このカレーマンと意思の疎通ができるなんて、大したものだ!  なんて、失礼なことを考えながら、段ボールの箱ごと買い占められてある大量の辛口レトルトカレーのひとつを手にした。 「マサヒトさん」 「んん?」  少し緊張気味に彼の名を呼ぶと、彼は眉をしかめて目を見開き、ニッと右に唇を吊り上げながら私を見た。 「っ……ご飯はいりますか?」  私は少し動揺しながらも、問い掛ける。
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