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まだ少し顔が熱いまま、この家庭で初めてのご飯を作る。
みんなの好き嫌いとか知らないし、好みに合うかわかんないけど……。
なんて思ってると、玄関のドアがガチャッと開いた。
硬直する体。
お兄さんのマサヒトさんが帰ってきたんだ。
「……お、お帰りなさい!」
帰ってきたその人に、精一杯頭を下げる。
その人の顔を見上げると、キヨフミさんと同じくうっとりするほど美しいお顔で、同じように跳ねた黒髪を下ろしていた。
長い前髪が窪んだ目元を翳している。長い煙草を一本くわえたまま、彼は私を苦い顔で睨んでいる。
「あ、あの、私、今日から住まわせていただく、小野香織です。
お部屋に荷物置かせてもらってます。今日から同じ寝室みたいで……って、それはお母さんから聞いてますよね。
あ、お夕飯もうすぐできるんで……」
緊張のせいか、黙ったまま私を睨むマサヒトさんにまくし立てて、言いたいことをぶつけてしまう。
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