第一話【カレーライス】

8/25
前へ
/25ページ
次へ
 先程の一方的なカレー攻撃に、まだ少し方針状態のまま夕飯を作り終えた。  お味噌汁に野菜たっぷりの焼きそば、後は卵焼き。  トレーに乗せて、キヨフミさんの部屋の前まで運ぶ。  ことん、とトレーを地面に置き、その場に正座。  何て話そう……。  頭の中で状況を整理して、ひと呼吸。よし。  コンコン、と扉をノック。  部屋からは何も応答が無い。 「あ、あの……キヨフミさん、ですよね? 私、今日からここの家で一緒に暮らすことになった、香織です。 さっきは、本当にごめんなさい……。あの、そんなつもりは無かったんですが、つい不注意で……。 まして、悲鳴なんて上げちゃって……キヨフミさんも嫌でしたよね。 本当にごめんなさい。 ……あ、あのお夕飯、扉の前に置いておきます。 食べたら、またここに置いておいてくださいね」  ゆっくりと、扉越しに話しかける。 「…………」  部屋から返事は無い。  その空気に耐えられなくなって、では、とだけ言ってその場を去った。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加