第6章

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ある日、俺は参考書を図書室に忘れたのを思い出し、いつもより早く学校へ向かった。 すっかり桜は散り、今は梅雨…。 曇り空は、なぜか寂しげで俺の心のように見えた。 ------------ --------------- 桜並木は、まだ冷たい風が吹き、人影のない道程はどこか寂しげで…。 あ、詩ちゃん。 久しぶりに彼女の姿を見た。 髪が少し伸び、背筋もピンと伸びていた。 その姿は、自信に満ち溢れキラキラと輝いているようにも見えた。 詩ちゃんに声をかけようと手をあげだ瞬間だった…。 彼女の元に走り寄る、1人の学生。 誰だ。 そして、彼女の肩に簡単に腕をまわし、歩き出す。 俺の心には、苛立ちと嫉妬が入り混じり…。 彼女は、あいつと一緒にいるために毎朝早く登校していたのか…。 入学そうそう、長期間も学校を休むわけない。 あいつと一緒にいるため…。 何だよ…。 無邪気な無防備な、でもシャイで可愛い…。 白い肌もあいつに見せたのか。 あいつのために、輝いていたのか…。 俺は、挙げた手を下ろしギュッと手を握りしめた。 何だよ、高梨 詩…。 簡単に、俺以外の誰かのモノになるなんて。 俺の、初恋はもう終わった…。
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