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☆嫌な奴☆
入学式が終わって、教室に戻る。ホームルームも終えて帰り支度をする。
私と真知子は1年C組。席は窓側で、真知子は私の前の席。
真知子が側にいて素直に嬉しい。
「詩、私今日は彼が迎えに来るからお先に(嬉)。」
「あ、うん。」
いいなぁ~。って、寂しいぃぃ~(泣)入学式の日くらい一緒に帰りたかったなぁ。でも真知子は、年上のイケメンの彼とラブラブだもん。
仕方ないね…。
「真知子、また明日ね。彼とデート楽しんでね。」
可愛い笑顔で彼の元に急ぐ姿は、幸せオーラ全開。
私もいつか、ステキな彼が出来るのかな?
さてと、私も帰ろう。
とぼとぼと下駄箱へ向かい、外を見ると、何だか雲行きあやしぃ~。
一歩外に出ると、
ポツ…。ポツ…。
「ゲッ。」
私の雨女っぷりは今に始まった事ではない。
おめでたい日は必ずと言って良いほど、雨。
ぼんやりと、下校して行く同級生達をみながら、自分が雨女なのを憎らしく思っていた。
人影が少なくなって、イザッ、ダッシュで帰るぞっ~。
っと一歩を踏み出そうとしたその時、何やら後ろに人の気配。
あれ?雨やんだ?
見上げると、紺色の傘が私の頭上にあった。
そこには、背が高くて吸い込まれそうな瞳の彼が立っていた。
「…あの。」
急に緊張が高まり、耳が熱くなってくる。
彼は優しい声…ではなく程遠く…ぶっきらぼうに、
「君、雨女なんだ。」
キレイな瞳で私を見下ろす。
ガーッん…。何よ!何なのよ!そんなストレートに言わなくったって。しょんぼり俯いていたら彼は、フッと意地悪に微笑し、
「しょーがないから、良かったら傘入れてあげようか?雨女さん。」
な、な、な、なにおぉ~?
何でこんなに上から目線?
初対面なのに(怒)。
「結構です。」
思いっきりムスッとした顔で言い放った。
そして、全力疾走で学校を後にした。
雨に濡れながら、ふと…。あの瞳を思い出した。
あれ?彼は何組なんだろう?名前は??
…。
もういいや。人の気にしている事をズバッと言う嫌な奴(怒)。
嫌な奴…。
私だって好きで雨女やってるわけじゃない。
もう知らないよ。あんな嫌な奴。
自分の部屋の窓から外を見ると、雨上がりのキラキラした陽射しが眩しかった。
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あの時は分からなかったんだ。
彼のさりげない、不器用な優しさが…。
私の初恋になるなんて。
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