第1章

3/3
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
☆嫌な奴☆ 入学式が終わって、教室に戻る。ホームルームも終えて帰り支度をする。 私と真知子は1年C組。席は窓側で、真知子は私の前の席。 真知子が側にいて素直に嬉しい。 「詩、私今日は彼が迎えに来るからお先に(嬉)。」 「あ、うん。」 いいなぁ~。って、寂しいぃぃ~(泣)入学式の日くらい一緒に帰りたかったなぁ。でも真知子は、年上のイケメンの彼とラブラブだもん。 仕方ないね…。 「真知子、また明日ね。彼とデート楽しんでね。」 可愛い笑顔で彼の元に急ぐ姿は、幸せオーラ全開。 私もいつか、ステキな彼が出来るのかな? さてと、私も帰ろう。 とぼとぼと下駄箱へ向かい、外を見ると、何だか雲行きあやしぃ~。 一歩外に出ると、 ポツ…。ポツ…。 「ゲッ。」 私の雨女っぷりは今に始まった事ではない。 おめでたい日は必ずと言って良いほど、雨。 ぼんやりと、下校して行く同級生達をみながら、自分が雨女なのを憎らしく思っていた。 人影が少なくなって、イザッ、ダッシュで帰るぞっ~。 っと一歩を踏み出そうとしたその時、何やら後ろに人の気配。 あれ?雨やんだ? 見上げると、紺色の傘が私の頭上にあった。 そこには、背が高くて吸い込まれそうな瞳の彼が立っていた。 「…あの。」 急に緊張が高まり、耳が熱くなってくる。 彼は優しい声…ではなく程遠く…ぶっきらぼうに、 「君、雨女なんだ。」 キレイな瞳で私を見下ろす。 ガーッん…。何よ!何なのよ!そんなストレートに言わなくったって。しょんぼり俯いていたら彼は、フッと意地悪に微笑し、 「しょーがないから、良かったら傘入れてあげようか?雨女さん。」 な、な、な、なにおぉ~? 何でこんなに上から目線? 初対面なのに(怒)。 「結構です。」 思いっきりムスッとした顔で言い放った。 そして、全力疾走で学校を後にした。 雨に濡れながら、ふと…。あの瞳を思い出した。 あれ?彼は何組なんだろう?名前は?? …。 もういいや。人の気にしている事をズバッと言う嫌な奴(怒)。 嫌な奴…。 私だって好きで雨女やってるわけじゃない。 もう知らないよ。あんな嫌な奴。 自分の部屋の窓から外を見ると、雨上がりのキラキラした陽射しが眩しかった。 ------------ --------------- あの時は分からなかったんだ。 彼のさりげない、不器用な優しさが…。 私の初恋になるなんて。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!